医療法人敬愛会グループ/ザ ナチュラルビューティクリニック・
ビューティークリニック ザ ギンザ・はもり皮フ科

クリニックの紹介

JP / EN / CN / KR
医療法人敬愛会グループ/ザ ナチュラルビューティクリニック・ビューティークリニック ザ ギンザ・はもり皮フ科
↑
↑

持続時間が短いといわれる溶ける糸(PDO)を当院があえて使い続ける理由

糸リフト(スレッドリフト)には溶ける糸と溶けない糸がありますが、ここ最近は身体に糸が残るリスク(感染やしこりなど)を考慮して、溶けない糸を使用するクリニックが増えています。

現在美容医療のスレッド治療で使用される溶けない糸には主に以下3つがありますが、それぞれオススメの部位や糸の特徴が異なります。

・PDO(ポリジオキサノン)
・PCL(ポリカプロラクトン)
・PLA/PLLA(ポリ乳酸)

当院では現在約20種類の糸リフトによる施術を行っておりますが、いずれも溶けないを使用しており、その中でも「PDO(ポリジオキサノン)」という種類の糸を全てにおいて使用して施術を行っています。

…美容に詳しい方やネットでこれらの糸の違いを調べたことがある方の中には、

「溶ける糸の中で、PDOって一番『持続期間』が短いのでは???」

と思われた方もおられるかも知れません。

今回は、この「溶ける糸の持続期間」の真相についてお話をしたいと思います。

本コラムの後半でより詳しく説明したいと思いますが、PDOは「持続力が短い」のではなく、「体内で溶けるスピードが早い」糸になります。

ここでポイントになるのが「溶けるスピードが速いと持続期間が短いのか?」という点でして(一般的にはこのように言われているかと思います)、

実際は「溶けるスピード(加水分解)が早い」=「持続期間が短い」 という図式は成り立たないという点が、このコラムで一番皆さんにお伝えしたい点となります。(…と、先に結論を述べてしまいました汗)

 

今回は「溶けない糸の種類(PDO・PCL・PLA)」について、まずはそれぞれの糸の特徴を比較すると同時に、「3つの糸の持続期間について」、そして「当院がなぜPDOを使用するか」についてまとめたいと思いますので、どうぞ最後までお付き合いくださいm(__)m

 

 

糸リフト「PDO」「PCL」「PLA」の種類と特徴

 


いずれもお顔のリフトアップや引き締め(タイトニング)治療で使用される溶ける糸ですが、まずはPDO、PCL、PLAの違いや特徴について簡単にまとめてみます。

PDOとは

PDO(ポリジオキサノン)とは、美容医療だけではなく外科手術の縫合糸としても広く使用されている天然素材でできた糸です。溶ける糸の中でも特に体内に吸収される期間が早いという特徴があります。

・糸の特徴
硬すぎず柔らかすぎない使い勝手の良い素材で出来ています。(使い勝手がよいので、外科手術などでも使用されています)

・体内に吸収されるまでの期間
6か月~12か月程度

・リフトアップ効果
PDOによるリフトアップ効果は、他の2つと比較した際には可もなく不可もなく、ちょうど中間くらいのリフト力となります。

・代表的な糸
テスリフト
N-COG
N-FIX
トキシル など

・オススメの部位
硬すぎず柔らかすぎずと良い意味で万能な糸のため、お顔の様々な部位に使用することができます。

またPDO(ポリジオキサノン)の素材には「脂肪萎縮作用」があるため、糸を挿入することで周辺の脂肪組織を引き締める作用があります。さらに、糸そのものが他の糸よりも「摩擦力」が生じやすいという特徴があるため、

①糸挿入時の術者による引き締めによるタイトニング
②糸そのものの作用によるタイトニング(脂肪委縮作用+摩擦力)

という「ダブルのタイトニング効果」が期待できる点も特徴です。

そのためどの部位にも使用できる糸ですが、特にお顔の脂肪が多い方には副次的なメリットもあるため特にオススメです。

・PDO糸のデメリット
他2つと比較した際に良い意味でオーソドックスな糸になるので、「とにかく強力にできるだけリフトアップしたい!」など、通常よりもしっかりとした効果を出したいという際には、PDO糸ではすこし難しいかも知れません。また体内に吸収されるまでの期間が半年~1年程度のため、一般的には持続期間が短い点もデメリットと言われていますが、この点については後ほど後述しますm(__)m

PCLとは

PCL(ポリカプロラクトン)も、PDO同様に医療現場で使用されている糸です。PDOよりも柔らかくフィットする点が特徴です。

・糸の特徴
しなやかで柔軟な糸のため、狭い部位や小さな範囲においても皮下に挿入した際にラインを形成しやすいという特徴があります。また溶ける糸の中でも体内に吸収されるまでのスピードが遅いという特徴があります。

・体内に吸収されるまでの期間
24~36か月程度

・リフトアップ効果
PCLの引上げ力(牽引力)はPDOよりも強いのですが、柔軟性がある糸のため、脂肪など重ための組織を引き上げる際にはパワー不足となることも多いです。そのためたるみの状態によっては本数を増やして対応する必要があります。

・代表的な糸
VOVリフト
ショッピングスレッド など

・オススメの部位
しなやかさ・柔軟さを持ったPCLは、口元や目元、首などの日常的に皮下組織がよく動かす部位や範囲の小さな部位などにオススメの糸です。

・PCL糸のデメリット
上でも述べた通り、柔軟性があるため細かい部位の調整を得意とする反面、ボリュームのある部位を引き上げる際には柔軟性が高いがゆえに、逆にすこし心許ないことが多いため、頬や輪郭などのリフトアップにはあまり適していないと言えるでしょう。

 

PLA/PLLAとは

合成ポリマー(バイオマス素材)でできたPLA/PLLA(ポリ乳酸)は、医療現場では手術で使用するネジやプレートなどに使用されている素材です。FDA(アメリカの厚労省のような組織)の認可を得ており、安全性は問題ないと言えます。

・糸の特徴
PLA/PLLAは、PDO、PCLと比較すると硬さがあり(そのため手術におけるネジやプレートの素材として使用されています)、皮下に挿入すると皮下組織にしっかりと食い込んで引き上げることができるため、リフト力が強い点が特徴です。
またPLA/PLLAは硬さのある糸のため比較的自由に形状を変更することができる点も特徴で、糸にデコボコをつけたりトゲ(コグ)をつけたりすることもできます。

・体内に吸収されるまでの期間
18か月~24か月程度

・リフトアップ効果
上にも記載した通り、PLA/PLLAは今回紹介している3つの糸の中で最もリフトアップ力があるため、比較的ボリュームのある皮下組織もガッチリ引き上げることができます。

・代表的な糸
シルエットリフト
ハッピーリフト など

・オススメの部位
リフト力に優れているので、頬や輪郭、ほうれい線などのボリュームのあるたるみを引き上げるのにオススメです。

・PLA/PLLAのデメリット
ボリュームのある皮下組織をがっちり引き上げることができるPLA/PLLAですが、逆に言うと目元や口元などの日常的によく動かすような部位などスレッドを挿入する際に細かな調整が必要な部位には適していません。また比較的固めの糸なので、挿入後、皮下に違和感が生じることもしばしばあります。

 

 

糸の持続期間は、溶ける糸ならどれも「ほぼ一緒」

 


まずはPDO、PCL、PLA/PLLAそれぞれの糸の特徴についてまとめましたが、ここからは今回のコラムで一番伝えたかった部分についてお話をしますね。

一般的には、3つの溶ける糸の効果については、以下のように言われることが多いですのですが、

体内に残存する期間が長い=効果(持続期間)もそれだけ長い

…スレッド治療の研究を15年以上にわたって行っているわたくしとしての現段階での結論としては、

【溶ける糸の効持続期間はどれも一緒】

であるという事実が分かってきております。

この理由については、大きく分けて以下2つになります。

 

1.糸の「残存期間」よりも糸の「張力持続期間」がポイント

上で述べた通り、PDOは最長1年、PLA/PLLAは最長2年、PCLは最長3年程度とそれぞれ糸が体内に残存する期間には違いはありますが、スレッドリフトとして糸が施術効果を発揮するには「糸が体内に残ってるかどうか」よりも「糸の張力(=組織を引っ張る力)が残っているか」という点が重要になります。

このような糸の張力が残っている期間のことを「抗張強度維持期間」と言い、この期間の長さは、糸の残存時間(溶けるまでの期間)よりも、「糸の太さ」や「糸の硬さ」等の影響を受けることが多いです。

単純に考えると、より太くてより硬い糸のほうが抗張強度維持期間が長くなるのでリフトアップ期間も長くなりますが、とはいえ皮下に挿入する糸となるので、さすがにあまりに太いものや硬いものを入れてしまっては術後に違和感が生じてしまいます。

そのため糸のメーカーさんは「できるだけリフト力が長く続く」+「できるだけ違和感がない」という2つの点を意識して糸を開発されています。(もちろんそれ以外にも色々な要素はありますが)

…という点で3つの糸を比べてみると、張力(抗張強度維持期間)についてはいずれもそれほど大きな違いがなく、どの糸を使用しても術後1年~1年半程度で次第に経年劣化していきリフトアップ効果が薄れていくと個人的には感じております。

 

2.コラーゲン産生期間はどの糸もほぼ一緒

スレッドリフトには、糸による物理的なリフトアップ効果(糸で引き上げる効果)とあわせて、異物を皮下に挿入したことによる創傷治癒作用(コラーゲン産生作用)による引き締め効果も期待できますが、この点においても、糸が体内に残る期間とはほぼ関連性はないということが当院のスレッド症例研究で分かりました。

個人差は勿論ありますが、どの糸を使用しても皮下におけるコラーゲン産生作用は半年程度で次第になくなっていくようです。

つまり、半年~1年程度で溶けるPDOも、最長3年程度体内に残存するPCLも、挿入後のコラーゲン産生期間はほぼ同じ=「効果(リフトアップ・タイトイング・美肌など)の持続期間はほぼ同じ」であるということになります。

この2つの理由から、PDO、PCL、PLA/PLLAなどの糸の種類に関わらず、いずれの溶ける糸も効果の持続期間はほぼ1年~1年半程度であるのではないかと推測されます。(コラーゲン産生作用は半年程度ですが、糸による物理的な引き締め・リフト効果=張力維持期間が1年~1年半程度のため)

 

 

当院がPDO糸にこだわる理由

 


PDO、PCL、PLA/PLLAの持続期間がいずれも同じくらいであるとしても、当院がPDO糸のみを使用するのには理由があります。

 

しこり・感染などの万が一のトラブルをできるだけ回避するため

PDO糸は半年から1年程度で次第に体内に吸収されるため、感染やしこりなどが生じるトラブルが生じる確率を最小限に抑えられる点が特徴です。皮下に残存する期間が長ければ長いほど、肉下種(しこり)や感染などのトラブルになる可能性が高くなります。患者様の身体へのご負担や術後の感染・トラブルなどをできるだけ回避するためにも、残存期間が短い糸を使用しています。

 

定期的なアップデートが可能なため

「去年のお正月の写真を見たら、顔の雰囲気が今と全然違っていた!!」といったことは、日常的にもよくありますよね。

お顔は歳を重ねるごとに老化が進んでいきますし、また場合によっては数か月・数年程度で体型(体重)に大きな変化が出ることもあるでしょう。

ヒトの身体は常に変化をしていくものなので、わたくしとしては、長年同じ形状をずっと維持することができる美容医療よりも1年程度で次第に元に戻る美容医療のほうが自然であり、患者様にとっても「常にその時の自分にあった姿」を反映することができる施術ではないかなと考えています。

スレッドリフトの施術では、糸が溶け切る前に追加で糸を挿入することも可能ですので(お勧めは2,3か月後に追加挿入し、ラインをさらに細かく調整する方法です^^)、そういった意味では糸の残存期間はあまり関係ないといえばないのですが、2,3年程度経過した際に、役目を終えた不要な糸が皮下に残っている状態で追加の糸を挿入してライン形成を行うよりも、皮下に何もない状態のところに新しく糸を挿入して施術を行うほうが術者としては挿入がしやすく、またキレイなライン形成をしやすくなるという特徴があるのではないかなと感じております。

 

 

できるだけ低侵襲の施術をご提供するために

 

当院では、「できるだけ患者様の身体に負担がかからない形で施術を提供する」という点を理念としていますので、リスクやトラブルが生じる可能性は最大限回避をした形で施術を行うことを最優先事項としています。(身体の負担が少ない施術=侵襲が少ない=「低侵襲」と言います) 今後もスレッドリフトによる施術はまだまだ今後もさらに進化していきますので、われわれも日々データをアップデートしていき、最新の情報をもとに最適な施術法を提供していきたいと考えています。

溶ける糸(PDO)を使用したリフトアップ・小顔治療は、メスを使用した手術のような大きな変化を出すことは難しいことが多いですが、できるだけダウンタイムやリスクを軽減しつつ、定期的にアップデートすることができるという特徴があります。

「自然に近い美の形成」を目指すという当院の考え方に共感していただける方が、一人でも多くいらっしゃれば嬉しいなと思います。

 

当院では現在、20種類程度のスレッド治療を取り扱っていますので、糸リフトによるリフトアップや小顔治療をご検討の際にはお気軽にご相談ください。
>当院のスレッドリフト治療一覧はこちら
>はじめての糸リフトガイド

はじめての糸リフトガイド
LINEアカウント

コラム監修者 吉田 由佳 医療法人敬愛会グループ理事長 専門科:形成外科・美容外科・皮膚科・美容皮膚科

関西医大卒、京都大学形成外科学教室入局後、京都大学附属病院、大阪赤十字病院、済生会中津病院、長浜赤十字病院を経て現在、医療法人敬愛会理事長に。アジア各国、韓国、シンガポールなどでスレッド治療の第一人者としてのべ数百人の美容ドクターの教育に尽力。国内では日本美容外科学会のシンポジストとしてスレッドの臨床発表も行う。スレッドや注入術、マシンなどによる施術を組み合わせ、より解剖的に有益で痛みの少ない低侵襲なエイジングケアの研究・開発を進め続けている。(日本形成外科学会会員・日本美容外科学会会員)

詳しい医師紹介ページはこちら